仕事柄なのか、よくこんな場面に出くわします。
「〇〇って、英語で何て言うの?」
先日はこんな具合でした。
「おかげ、って何て言うの?」
おかげ…。
聞くところによると、隣人がペットを預かってくれた”おかげで”彼らは旅行に行けたのだとか。
一番伝えたいことって何?と聞くと、”旅行に行けた”という事。
そこで、以下の提案をする。
”I could travel.”
(旅行に行けた。)
”Because the neighbours took care my pets.”
(ご近所さんがペットの世話をしてくれたから。)
しかし…。
ちょっと違うんだなと、首をひねられる。
「”おかげ”、って感じがしない。」
このように、日本語の奥ゆかしさをどう表現するかは、私にとって難題です。そんな折、こんな小話を聞き、安心しました。
あるレセプションで披露されたスピーチでの実話。
ある企業の社長さんが英語圏現地で大勢の聴衆を前に、スピーチをすることになりました。
もちろん、通訳が帯同しています。
ただ、この社長さん、どうしてもラストは自分の言葉で締めくくりたいと言い張ります。
何を言うのか一抹の不安を感じますが、頷くしかない通訳。
さて、スピーチも終盤。
満を持してにこやかに締めくくった社長さんの一言とは。
「ワン、プリーズ。」
ご満悦の表情で壇上を降りる社長さんに通訳が駆け寄ります。
「なんだ、君。通訳なのに分からんのかね。”ひとつ、よろしく”という意味だよ。」
吹き出して笑ったのもつかの間。
自分も、この社長さんと大して変わらないのでは…と思い返します。
そうだ。この間だって、「体内時計」という語彙が分からず「physical rhythm」と言ってしまい「ダンスを踊ることかと思った。」と大笑いされたばかり。
しかし、この奇妙な溝を埋めることが言語を学ぶ楽しさでもあるのでは、と思います。